【中小企業成長支援促進事業の状況報告】新潟・市民映画館 シネ・ウインド

2020年10月13日 お知らせ

  • ICTを提案する
  • ICTを活用する
  • 新潟市に進出する

令和2年度 中小企業成長支援促進事業

事業の概要

中小企業成長支援促進事業では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によるテレワークなどの社内環境整備からコロナ禍収束後を見据えたデジタル技術の活用「DX(デジタルトランスフォーメーション)※」に向けた取り組みまで、事業者の課題に応じた各種専門家を派遣し、早期解決を支援します。また、国の緊急経済対策事業などの積極的な活用を含む助言も行います。

本記事では、新潟市中央区の有限会社新潟市民映画館(通称:シネ・ウインド)における本支援事業の実施状況についてご紹介します。6月14日以降、5回の面談を実施し、営業活動の効率化を主な相談内容とし、課題の顕在化および解決策の提案、実施、今後行なうべき施策の検討などを行なっています。7月には「入場予約システム」を導入し、今後は「タブレットPOSレジ」「事前座席指定」等の導入を予定しています。

 

※DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

対象事業者

有限会社新潟市民映画館(通称:シネ・ウインド)

シネ・ウインド公式サイト

アドバイザー

石垣 比呂志(ITコーディネータ)

石垣氏プロフィール

背景と目的

新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言発出および新潟県による営業自粛要請により、新潟・市民映画館シネ・ウインドは1985年の開館以来初となる2週間の臨時休館を実施、大幅な来場客減少に直面しました。営業再開後も入場者数の制限をはじめとした安全対策を講じつつ、劇場運営の抜本的な見直しを迫られています。限られたリソースで映画館としてできる限りのサービスを提供すべく、デジタル活用による営業活動の効率化を模索します。

 

新潟・市民映画館 シネ・ウインド

今回導入された入場予約システム

コロナ禍の対策として顔認識搭載の検温器を設置

タブレットPOSレジや会員管理システムの導入も検討中

相談者の声

井上 経久 さん(シネ・ウインド支配人)

ご相談をされた経緯をお聞かせください。

2月以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、入場者数がかなり落ち込みました。その中で短縮営業や入場制限をしつつも、今後はなかなかこれまでのようにはいかないだろう、これまでとは違った形で営業をしていかなければいけないと感じていました。

そうした中、全国各地にある他の小規模映画館のなかには、リモートトークやITを活用している先行事例があり、注目をしていました。当館が同じようなことをやれるだろうか?と考えたときに、我々にはまずIT活用の実績も、知見もないという現実がありました。では、どうしたらいいのだろうか?と考えていたタイミングで、本支援事業を知りました。様々な方の知恵と、専門家の方の意見を採り入れながら、自分たちでできることをやろう。そして、自分たちができないことを明らかにし、課題を潰しながら事業継続のための取り組みができればということで、ご相談をさせていただきました。

具体的にはどのような課題があったのでしょうか?

これまでも課題だと思っていたことでもあるのですが、「予約システム導入」「POSレジ導入」「会員制度の更新率向上」という課題が、コロナ禍でより顕在化した印象です。実際に相談を進める中で取り組みを実現したこともありますし、一足飛びにできないこともあるとわかりました。

相談して良かった点を教えてください。

石垣さんに相談をさせていただく中で、これらを実現するにあたっては、想像以上にハードルがあるんだなということに気づかされました。取り組みに対する準備であるとか、場合によっては意外な面で足りないものがあって。対応することで先に進めることもあれば、もう少し時間が必要なものもある。そういったことが、ひとつひとつ見えてきました。そのような課題解決に対する事前準備の必要性なども可視化できたことがよかった点だと思います。

コロナ禍で最も影響のあったことは何だったのでしょうか?

私たちのような小規模の映画館は、大規模なシネマコンプレックスと比較すると、監督や作り手や俳優と密接な関係があり、そういった方々を来館ゲストでお招きしてお客様に近い距離でご紹介できるという魅力があります。コロナ禍によって、移動を伴う対面イベントが制限され、そのメリットを発揮できなくなりました。

そうした中で、春先くらいから各地の映画館でオンライントークイベントが普及し始めました。私たちも、他の劇場と情報交換をしながら準備を進めましたが、現状のシネ・ウインドの設備の中で、できることとできないことがあることがわかりました。今できることをいち早く導入し、できない部分はどうやって解決していくのか?といった段階的な進め方をご相談できたのは良かったと思っています。

5回の面談を通して、具体的に実現できたことはありますか?

現時点で実現できたことは、入場予約システムの導入です。実は、コロナ禍以前にも、手探りで調べていたことがありました。しかし、何をどの程度採用したらいいのかということまでは分からず、具体的に導入を進めていくには至りませんでした。

相談時点では、電話予約制で入場制限を行っていましたが、お客様は日中しか予約できず、劇場側も電話応対が大変でした。ネットからいつでも予約できる仕組みの導入が不可欠でした。石垣さんには、既存の予約サービスから「これなら導入できるんじゃないか」というものを選定してもらい、劇場サイトとの連動を含め短期間で効率良く構築できたと思っています。入場予約システムは7月中旬から運用開始、お客様からも好評をいただいています。

相談をふまえ、今後、実現が期待できそうなことはありますか?

今回ご依頼する中で是非お願いしたかったこととして、会員管理システムの見直し、検討がありました。以前から、入会申込のデジタル化と会員更新率向上が大きな課題と認識していました。ただ、数千人以上にものぼる会員様の情報をどのように管理していくのかといった問題は、一足飛びには解決できません。また、既存会員の方の中にはご高齢の方が多く、システム化へのハードルが高いという問題点もあります。石垣さんに相談した結果、QRコードでスマホから即入会できる仕組み、年会費の自動引き落とし等が有効ではないかとの結論に至りました。今回の相談期間中に実現できませんでしたが、自動決済、セルフサービスが確実に必要になってくるという課題が可視化できたことは、大変大きな収穫だと思っています。

アドバイザーの声

石垣 比呂志 さん(ITコーディネータ)

今回の相談では、具体的にどのような提案をされたのでしょうか?

大きく分けて3つの施策を提案しました。「予約システムの導入(お客様の利便性・安全性の向上)」、「POSレジ導入(会計業務の効率化)」、「会員管理システムの刷新(入会促進と更新率向上)」です。このうち、予約システムについては”入場予約システム”という形で一部導入済みです。

新技術導入にあたっての課題はありましたか?

シネ・ウインドがIT投資に使える金額、解決までの猶予時間は決して多くありません。導入コストや求められるスピードを考えると、現実的にはパブリッククラウドからの選定となります。予約システムを例にとると、機能要件は [上映作品のネット予約+事前座席指定+決済] ですが、そこまでやると利用料が高額で、かつ劇場での受付運用も大きく変わるため入念な準備が必要です。やむなく今回は入場予約のみとしました。今後の映画館業界全体の動向も見ながら、助成金の活用も含めて継続検討していきましょうと提言しています。

今回の相談におけるDX化の目的を教えてください。

「営業活動の効率化」 における課題は多岐に渡りますが、今回はシネ・ウインドで働いている人たちが “やらなくていいこと” を、ITで代用できないかという点にフォーカスしました。ヒアリングを重ねると、様々な発見がありました。わかりやすいのは会計業務です。レジのジャーナルを1件ずつ確認しながら会計ソフトに打ち込むという、アナログなやり方でした。POSレジに替えることで、取引データを会計ソフトに連動できるため入力が不要となります。また、作品別の売上や客数も自動集計できるため配給会社への報告業務も迅速化できます。DX化で時間的余裕を生み出し、その時間をお客様対応に振り向けることがより良いサービス提供につながると考えました。

今後、実現できそうなことはありますか?

会員管理システムについては、スマホから即入会でき、かつ、年会費の自動引き落としができるサービスを選定、導入後の運用フローも含めて提言しました。若年層の入会を増やし、いかに会員を続けていただくか。システムだけでは解決できないため、期待を超える体験の提供など、今後の実現に向けた道筋を整えています。

専門家として相談で心がけていることをお聞かせください。

心がけているのは、相談内容の背景にある問題、目指している姿を理解することです。目の前の悩みだけでなく、将来予測される変化やリスクを考慮し、やるべきことをを洗い出し、優先度をつけて、今対処すべき課題を決めていきます。「本質的な問題はここにあります。今回はこの部分を解決しますが、次はここを見据えて進みましょうね」ということまで共有できるように心がけています。

コロナ禍により、スピード感を持って相談が進んだ面もあるのでしょうか?

以前から挙がっていた課題が、コロナ禍でより表面化され、実行に移す機会になったと思います。特に入場予約は感染拡大防止で待ったなしだったため、意思決定に必要な情報をできるだけ多く用意して面談、迅速な決断で導入が実現しました。

今後の展望

シネ・ウインドでは、入場予約システムをすでに導入し、タブレットPOSレジも近く導入の予定があります。また、予約システムにおける座席指定・決済の導入、会員管理システムの見直しなども検討しています。

コロナ禍による影響への対策のみならず、以前から抱えていた課題の解決にもつながるチャンスと捉え、これまでになかなか実現できなかったデジタル技術導入に向けて、引き続き取り組んでいます。

 

一覧へ戻る